「サラリーマン大家に暗雲? アパート急増で利回り低下 全額ローンはもはや困難に」


今日11月30日(木)、「日本経済新聞」(電子版)に、私の取材が掲載されました!!

どうもありがとうございます!!

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO23748790R21C17A1K15200?channel=DF280120166594&style=1&n_cid=DSTPCS001

サラリーマン大家に暗雲? アパート急増で利回り低下 全額ローンはもはや困難に

 

 

 

 

 

2017/11/30

地方で空室が埋まらないアパートが増えている(栃木市)

会社勤めをしながらアパートも経営する、サラリーマン大家さんを取り巻く環境が変化してきた。金融機関の融資姿勢は厳しくなり、アパートの急増で利回りは低下傾向にある。注意点を探った。

◇  ◇  ◇

「最近、借り入れの金利負担がやや重くなってきた」。東京都の会社員Aさん(42)は気を引き締める。

AさんはITサービスの会社に勤める一方で東京都、埼玉県、千葉県内に戸建て、アパートなど計9軒を持ち、貸し出している「サラリーマン大家さん」の顔も持つ。週末になると自ら所有物件に出向き、壁紙を張り替えたり、トイレに温水洗浄便座を据え付けたりして魅力アップに精を出す。

9物件の総取得額は約7000万円。このうち6000万円を借り入れている。毎月の家賃収入は満室ならば87万円だ。ローン返済額や固定資産税などを差し引くと46万円が手元に残ると見込む。

■金融機関の融資姿勢、厳しく

気がかりなのは最近、金融機関の融資がめっきり厳しくなったことだ。これまで全額ローンで賄ってきたが「今年に入って新たに資金を借りようとしたら、10~20%の頭金を求められるようになった」。過去の借り入れの金利負担は2%弱だったが、同じ条件では融資を引き出しにくくなり、今は4~5%の金利を求められるという。Aさんは「金利負担を考慮して利回りが得られるかどうか、慎重に物件を選ぶ必要が出てきた」と話す。

「借りすぎに注意しながら計画を立てて不動産を選び、投資する」。都内のIT企業に勤めるBさん(59)はサラリーマン大家さんとして約30年の経験を持つベテランだ。札幌市、名古屋市、東京都などに約30の区分所有マンションや1棟建てのアパートを持つ。

低金利で運用収益が期待できないと不動産投資に目を付けた。低金利を逆手にとって物件取得の資金はほぼローンで賄ってきた。現在の資産総額は7億円、負債総額は4億7000万円程度になるという。

そのBさんも金融機関の姿勢の変化を感じ取っている。特に地方の銀行は「全額ローンは無理。最近は10%の頭金が必要になった」と話す。手持ちの物件を売るわけにもいかず、すぐに多額の資金は用意しにくい。「しばらくは投資のペースを緩め、投資先を慎重に選びたい」と話す。

金融機関の姿勢ががらりと変わった背景には、金融庁の監視強化がある。急増する個人向けアパートローンと郊外で増える空き家の群れに危機感を抱いた金融庁が監視を強めた結果、国内銀行の個人向けアパートローン新規融資額は急減速した。日銀によると、2017年4~6月期は前年同期比15%減だった。貸家の新設着工戸数も減っており、9月は前年同月比2.3%減と4カ月連続で前年同月実績を下回った。

サラリーマン大家に暗雲? アパート急増で利回り低下 全額ローンはもはや困難に

 

 

 

 

 

2017/11/30

実際、借り入れに頼った不動産投資では利回りを上げにくくなってきた。資材価格に加え、戸建てやマンションの工事は人手が足りず、人件費も上昇。都市部を中心に不動産の物件価格が上がったため、投資利回りは低下している。14年7~9月期は平均10%程度とされていたアパート投資の利回りは、今年に入り9%を割り込んだ。

■注意点(1)実質利回りで計算しよう

不動産投資で注意しなければならないのは表面上の利回りと、経費などを差し引いた実質利回りに差がある点だ。Aさんの場合、年間の想定家賃収入を物件価格で割った表面上の利回りは16%。実際は物件を買うときに登記など経費がかかる。借り手が代われば修繕が必要で、固定資産税も納めなければならない。家賃収入から経費を差し引くと実質利回りは13%に低下する。物件管理を管理会社に任せる場合は手数料が要る。満室を保てなければ家賃収入は下がり、利回りは悪化する。

経費節減のため、自前で奮闘しているのは神奈川県の会社員Cさん(41)だ。東京都葛飾区の競売物件を買い取り、リフォームして貸し出している。洗濯機といった家具も含めて計1850万円を投資。外国人も入居できるシェアハウスとして今年3月にオープンした。全5戸が満室の場合、毎月計21万円の家賃収入がある計算だ。

Cさんは所有物件の価値を高めようとインテリアも工夫(東京都葛飾区)

管理会社を介さず、トラブルがあったときは自ら対応する。ただ自宅から電車で1時間半ほどかかる場所に常時通えるわけではない。ゴミ出しや共用部分で起きる対応は、入居者の1人に家賃を少し割安にした上で代行してもらっている。例えば洗濯物が洗濯機に放置されていた場合、外国人入居者向けに「洗濯物は放置禁止」と張り紙してもらうといった具合だ。

■注意点(2)サブリース会社との契約精査が必須

「初心者も安心」「『家賃保証』あり。ご相談ください」――。遊休地を保有する個人の元を足しげく訪ね、アパート経営を勧める住宅メーカーや不動産会社は、おおむね物件を一括して借り上げ、借り手に転貸するサブリース事業を手がけているケースが多い。

アパート経営は初めてといった場合、10~20%に相当する手数料を払えば入居者を募集してくれたり、一定期間は空室が出ても家賃を保証してくれたりするサブリース業者は一見、強い味方に見える。ただアパートローンが急増する過程で、物件を所有する大家とサブリース業者との間で当初の想定と実態にズレが生じ、トラブルが目立つようになっている。

最近増えているのは家賃の長期保証を巡る問題だ。一定期間の「定額保証」を条件に契約するケースが多いが、実際は借り手が付かず空室が続くと、サブリース業者が家賃の減額を要請してくる。減額すれば赤字になってローン返済に支障があると大家が拒んだ場合、契約を解除される場合がある。

今年2月には愛知県の80歳代の男性が不動産会社に対し「10年家賃が変わらない契約だったのに、途中で減額されて損害を被った」と主張し、訴訟を起こした。サブリース会社と契約する際には、経営環境が悪化した場合や空室時の条件など内容を詳細にチェックする作業は欠かせない。

住宅診断サービスを提供するさくら事務所の長嶋修会長は「物件の立地によって異なるが、家賃は年1~3%のペースで下がると考えるのが無難」と指摘する。サブリース会社によっては「家賃保証」をうたいながら、契約の中に物件を所有する大家が家賃収入を得られない「免責期間」を盛り込んでいる場合もある。修繕やエアコンといった設備更新の費用は物件所有者の負担となる場合がほとんどだ。

サラリーマン大家に暗雲? アパート急増で利回り低下 全額ローンはもはや困難に

 

 

 

 

 

2017/11/30

一般に物件所有者の個人の側からサブリース契約を途中で解除するのは難しい。所有者は貸し手にあたり、サブリース会社は借り手。日本の住宅法制は借り手保護の立場で組み立てられている。「賃料減額の要請を受けても途中で解約できず、債務返済が行き詰まる人が増えてきた」(不動産コンサルタントの平野雅之氏)

トラブルの急増を受けて国土交通省は昨秋、サブリース会社に対し、家賃の減額のリスクを十分、物件所有者に説明するように求めた。不動産会社やサブリース会社は「家賃収入が減らない場合の収支計画」として好条件がそろった「ベストシナリオ」を示すケースが多く、「実際の収支悪化に直面してから慌てる個人投資家も多い」(青山財産ネットワークスの高田吉孝執行役員)。バラ色のシナリオをうのみにせず、空室が続いた場合や免責条項、家賃を減額せざるを得ない「ストレスシナリオ」など複数案を検討し、算定根拠の明示も求めることが重要だ。

■注意点(3)多額の借り入れ、危険増す

不動産投資に個人を引き込む住宅関連企業や金融機関の誘い文句の一つが「相続時の節税対策になりますよ」というささやきだ。現金で相続するより投資用不動産とした方が、土地や建築物の評価額が下がるという制度の存在が背景にある。

だが、多額の借り入れに頼った不動産投資は危険だ。甘い想定で投資を始め、満足に借り手を見つけられない状態になれば、ローン返済に必要な収入が手当てできず、たちまち資金繰りに窮してしまう。武蔵コーポレーション(さいたま市)の大谷義武社長は「物件価格は全般に上昇から踊り場に入っており、今後は下落傾向が鮮明になる」と指摘する。駅に近い立地と郊外の物件の価格差も開いている。都心から30キロほどの距離にある千葉県柏市では駅周辺の17年の路線価は底堅いのに対し、郊外の団地周辺は下落幅が広がっている。借り手を集められず資金が回らなくなれば、最悪の場合、物件の売却を迫られる可能性がある。

■不動産投資、成功の秘訣は 識者に聞く

業者頼みやめ、「経営する」気で 不動産コンサルタント 平野雅之氏

 

会社員が不動産投資で成功するには(1)いかに競争力ある立地を確保するか(2)どの程度の家賃が得られ、修繕や設備更新などの費用にどのくらい必要なのかを把握し、主体的に計画して実行していく必要がある。

最初が肝心なのはもちろんのこと。投資を始めてからも近隣に競合物件が現れれば、いかにリノベーションなどで魅力を高めて入居者を確保するかといった戦術を練る必要がある。会社の仕事に追われる忙しいサラリーマンでもいったん不動産投資を始めたら「経営する」という覚悟が要る。サブリースや管理会社などに任せきりではいけない。

人口減、需要減の時代を前に、不動産投資は簡単でない。ただし自分で不動産の勉強をして知識を深め、「将来の需要が着実に上がる」という物件を選別して投資できる利点はある。例えば全国の自治体で策定が進む「立地適正化計画」で、住民が市の中心部に集まるなら、郊外よりも中心部にある土地の方が有望だ。町の発展の見通しと入居ニーズを踏まえ、どのような物件で投資収益を上げていくのかを熟慮すべきだ。

売却損に備え、頭金50%以上に 青山財産ネットワークス執行役員 高田吉孝さん

 

国内の世帯数が減る以上、不動産の需要も先細りになる。アベノミクスが始まってから5年間は株式相場の上昇なども追い風になり、首都圏のタワーマンションへの投資で値上がり益を得る人もいた。ただ向こう5年間は20~49歳の住宅取得層の人口が減り、需要は減少するとみている。物件価格は総じて下がる方向とみていい。「家賃は下がる」という前提で収支計画を立てた方が無難であり、売却時に損失が出るのがむしろ自然と心得ておいてほしい。

金融機関は個人の不動産投資に関連するローンを厳しくしようとしている。低所得者層を中心により多くの頭金を求めるようになっており、融資姿勢は厳しくなっている。頭金の比率が低いまま不動産を購入すると、家賃の減額や売却損が生じたときに、当初計画に比べて収支が大きく下振れする懸念もある。個人は頭金をおおむね50%以上用意して不動産に投資する姿勢が大切だ。借り入れに家計の多くを依存すれば、手元の現預金が減り、資金繰りに窮する事態に陥りかねない。相続税の節税効果どころではなくなるだろう。

(マネー報道部 南毅)

[日経ヴェリタス2017年11月19日付]

――――――――――――――――――――――――――――――――

【加藤隆新著情報】

「不動産投資家なら必ず体験する! 本当にあった怖い話」 (㈱ぱる出版)

(1月7日(土)発売)

https://www.amazon.co.jp/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E6%8A%95%E8%B3%87%E5%AE%B6%E3%81%AA%E3%82%89%E5%BF%85%E3%81%9A%E4%BD%93%E9%A8%93%E3%81%99%E3%82%8B-%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AB%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%80%96%E3%81%84%E8%A9%B1-%E5%8A%A0%E8%97%A4-%E9%9A%86/dp/4827210373/ref=sr_1_8?ie=UTF8&qid=1481201340&sr=8-8&keywords=%E5%8A%A0%E8%97%A4%E9%9A%86

――――――――――――――――――――――――――――――――

【加藤隆コラム情報】

  • 楽待特集コラム『加藤 隆』

http://www.rakumachi.jp/news/archives/author/kato

  • グランシャス㈱お役立ちコラム「現役最古参のサラリーマン大家の先輩コラム」(区分所有マンション(一棟物):オーナー目線等)

http://toushi.grancieux.co.jp/authers/auther-3

  • じるる「不動産投資の情報サイトじるるで始めるマンション経営」(㈱ジールコンダクター)(中古区分所有マンション:運用:入居者事情等)

http://www.ziruru.com/category/column/kato_taka/

  • マイナビ

http://chintai.mynavi.jp/chintaikeiei/superooya/detail_29.html

  • 住まいる!投資コラム(資産運用としての収益用不動産投資物件:区分所有マンション:リスク等)

http://www.smile-invest.jp/columns

  • 健美家コラム『不動産投資で地獄を見た人の怖い話』

http://www.kenbiya.com/column/katota

  • 加藤隆オフィシャルサイト

http://kt-taka.net/

 



このページの先頭へ